新田次郎の「山の歳時記」を読んだ
新田次郎の「山の歳時記」を読みました。
新田次郎さんと言えば、「八甲田山死の彷徨」とか「孤高の人」など、山岳小説という分野を開拓した作家です。
孤高の人は漫画にもなっていますね。
この本は小説ではなくエッセイ集で、白い野帳、山旅ノートという本から登山に関わるものをまとめたものになります。
日記に近いその体裁で、1つの題で4~5ページぐらい書かれています。
内容は多岐に渡ります。一部上げると、
- 新田次郎が勤めていた富士観測所のこと
- 登山のこと
- 登山家のこと
- 故郷の長野県松本、近くの霧ヶ峰のこと
- 高山植物のこと
などです。
登山も北・南アルプス、奥多摩、富士山、霧ヶ峰など、僕が登ったことのある山も多数でてきて興味深く読みました。
とにかく面白い本だったのですが、僕が一番引き付けられたのは新田さんの時代の山のことです。
新田さんは明治生まれ、昭和の時代を生きた人。
現代と変わったところ、変わらないところがあってその内容が面白い。
変わったところでいうと、例えば常念岳のコマクサ。
今ではコマクサと言えば燕岳ですが、新田さんの時代はコマクサは常念岳が一番だったようです。
それから富士山の強力(ごうりき)。
その昔、富士山の小屋や山頂に荷物を背負いあげる強力がいたそう。
富士山の麓には山の案内役(ガイド)を兼ねて強力たちが、登山客に声をかけていたのだそうです。
そんな興味をかきたてらる内容がたくさんありました。
もちろん、新田次郎の登山の姿勢や、登山のやり方も面白いです。
最後に。
新田次郎はその生きた時代の頃から、壊れていく自然・山を憂いていました。
そして本に書かれている山の中にも、今では道路ができたりロープウェイができたりして人がたくさん入るようになっている所もあります。
当時の山と比べると明らかに山の様子が悪い方に変わっているのが分かる場所もあります。
「自然は壊すのは簡単だけど元に戻すことはできない」
と書かれていて確かにそうだな。と思いました。
僕にとって自然保護へ注意を向けるきっかけの一冊となりました。