(春・夏・秋)登山・トレッキングの服装・レイヤリングの基本
「登山を本格的に始めてみようかな」と思った時、より深く登山の服装について知る必要があります。
山と長く付き合うことで強風雨に見舞われたり、高山で天候が急変することも経験することでしょう。そんな時、正しい知識を身に着けておくことで、体調不良や低体温症のリスクを減らすことができます。
ここからお話しするのは、登山のレイヤリング(重ね着)、素材・機能性について。それから夏、春秋の登山の服装パターンについてです。
「日帰り登山の装備について詳しく知りたい」、「登山のチェックリストを見たい」という方は次の記事を参考にしてください。
目次
- 登山のレイヤリング(重ね着)について
- 登山服の素材の基本
- 夏の登山の服装
- 楽ちんスタイル
- 王道スタイル
- 靴下・登山靴について
- 夏の高山に登る場合
- 春秋の登山の服装
- 春秋の登山の服装の基本
- 春秋の高山に登る場合
- レインウェアー・便利なアイテム
登山のレイヤリング(重ね着)について
人間は恒温動物で一定の体温を保っている必要があり、体温が上がり過ぎたり、逆に下がり過ぎたりすると体調を崩します。
登山では気象条件、運動(登り下り・休憩)により、体温が上がったり下がったりします。レイヤリング(重ね着)を適切に行うことで、体温を過度に上げ下げすることを防ぐことができます。
レイヤリングは、服の着脱・ジッパーの開閉が容易な上半身で行います。
そして、基本は3層レイヤリングです。
- ベースレイヤー:汗を吸収して素早く発散し、肌を快適な状態に保つ
- ミドルレイヤー:空気の層を作り体から発生した熱を保つ、逃がす
- シェル・アウター:雨・風の侵入を防ぐ、過酷な天候から体を防御する
3層レイヤリングが基本ですが、3千メートル級を超える高山に行く場合には、プラスしてより暖かいダウンウェアや化繊インサレーションウェアが必要となります。
登山中は山の気温、運動・休憩の状況により適宜レイヤリングを調整しましょう。
どこで何を着るのかという決まりはありません。「暑くなったら脱ぐ、寒くなったら着る」ことを繰り返します。
大切なことは面倒くさがらずにやるということです!
レイヤリングについて詳しくは次の記事を参考にしてください。
登山を何回か経験し、自分でレイヤリングをやりくりすると自分なりの調節術が出来上がってくるでしょう。
登山服の素材の基本
登山の服装が難しいのは、「動」と「静」が交互に起こるためです。
山を登っている時(動)は体温が上昇してたくさんの汗をかき、昼食・休憩など動きを止める時や、ゆるやかな道を歩いている時(静)は体温が下がります。
汗で服が濡れると、気化熱によってどんどん体温が下がっていきます。このことは体調不良の原因にもなりますし、強風下では低体温症のリスクが高まります。
登山で怖いのは体温が下がること。
人間は体温が下がると体の機能に不具合が生じて、最悪の場合は行動不能に陥ります。
街着として良く着られる「綿・コットン素材」の製品は柔らかで肌触りがよく、汗の吸収に優れています。
ところが、綿は汗をよく吸収しますがすぐに乾きません。そのために汗を多くかくと服が濡れ、じめじめとして不快になります。
登山の服に「綿」のものではなく、ポリエステルのような「化学繊維」を選ぶ理由はここにあります。
化学繊維や汗を吸収してもすぐに発散するので、肌が濡れて体温が下げることを防ぎます。
ショップには高機能な化学繊維やメリノウール素材を使った登山ウェアがたくさんあります。予算的に厳しい場合は、まずはラニングウェアなどのスポーツウェアで十分に代替できます。
より高い山に行くとか、より快適に登山をしたい場合は登山専門のウェアを買うといいです。
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・登山のベースレイヤー(アンダーウェアー・下着)の選び方
夏の登山の服装
さて、ここからは登山の服装について説明していきます。
まずは夏の登山から。2つのスタイルを紹介します。
夏の楽ちんスタイル
夏はとにかく暑い!
そんな時は半袖Tシャツ、ハーフパンツのスタイルが快適です。
雨が降らないことがほぼ確実であれば、ハーフパンツは綿のものでもいいです。
「半袖Tシャツも綿しかないよ!」
という方は必ず着替えを持って行き、汗で濡れたら着替えるようにしましょう。
注意事項が一つ。
丈の短い服装は日焼けし、植物や岩によって擦り傷ができる可能性があることを覚えておきましょう。
長時間の登山になる場合、日焼けは体調不良の原因になりますので「日焼け止めクリーム」を塗って下さい。
SPF50+のような、SPF値が高め日焼け止めクリームを塗りましょう。
登山の日焼けで一番痛むのは首回りです。
対策として速乾性のタオルを首に巻くのがおすすめです。
Caloics® 速乾タオル スポーツタオル 2枚セット 収納袋付き
夏の王道スタイル
登山では、暑い夏でも長袖Tシャツにロングパンツを履くことが多いです。
主な理由は上で書いたように日焼け・怪我の対策です。
また、高山では気温も下がりますので、体温を下げないために長袖・ロングパンツスタイルが良いです。
ロングパンツの場合も、素材は化学繊維のものを。
ジーンズは絶対に駄目です! 汗で肌にジーンズがくっついて歩けなくなります。
長袖・ロングパンツの王道スタイルで上高地を歩く
後ほど紹介しますが、夏の場合でもレインウェアは必ず準備しましょう。
レインウェアは雨から身を守るだけなく風を防ぐこともでき、低体温症のリスクを大きく減らすことができます。
靴下・登山靴について
靴下はやや分厚いものがおすすめです。
登山は荷物が重くなり、足の裏にかなりの負担がかかり疲れます。
靴下に厚みがあるとそのクッション性によって負担が軽減されます。
登山用の靴下はメリノウール素材のものが快適です。汗をかいても冷たくならず、臭いも抑えられます。
足先は汗をかきやすいので、僕はお昼休憩時は靴と靴下を脱いで、足先・靴下を乾かします。
足が濡れていると皮膚が柔らかくなり、靴擦れの原因にもなります。
汗がひどい時はお昼休憩時に靴下を履き替えることをおすすめします。
僕のメインの靴下はフィッツとスマートウール。肌触りが最高で、履いていて気持ちいい、
靴下専門のメーカーだけあって、足を靴下に通した瞬間に上質であることが分かります。
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・僕がおススメする登山の靴下は「フィッツ」と「スマートウール」
「登山靴」は日帰りで標高が低い山(例:高尾山、丹沢の大山)、トレッキングレベルの山であれば普通の運動靴でも問題ありません。
ただし、普通の運動靴は「防水性能」がないものがほとんどです。
川を渡るような登山や、前日に雨が降って道がぬかるんでいる可能性がある場合は、そのような靴で山を歩くことは不向きです。
また、岩場がある山、高山に登る時には「足を保護する」ために登山靴・トレッキングシューズを履いて行きましょう。
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夏の高山に登る場合
高山に登るとなると防寒対策が必要になります。
地上(標高0m)の気温が30度の場合、標高が2000mの山の気温は18度、3000mの場合は12度となります!
このように標高が高い山に登る場合は、季節は夏でも気温が低くなるので服装は春・秋と同等レベルのものを用意する必要がでてきます。
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春秋の登山の服装
春秋の登山の服装の基本
春・秋は気温が下がりますので、基本的にレイヤリング(重ね着)を行います。
ベースレイヤー(直接肌の上に着るもの)は長袖のものを選びましょう。
ベースレイヤーの上に着る代表的なものにフリースジャケットがあります。
適度に体温を保ちつつ、汗を放出して肌を快適な状態に保ちます。
僕が使っているフリースジャケットはパタゴニアのRシリーズ。
値段は結構しますがフリースジャケットとして評価はとても高く、10年ぐらいは使える丈夫さもあります。
登山を本格的に始めようと思う方は、一度その着心地を試してみてください。
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5月、9月の山となると、気温が10度台になることはざらです。
事前に山頂がどれぐらいの気温になりそうかを調べましょう。
フード付きで保温性の高いベースレイヤーや、ロングパンツの下に穿くタイツが必要になってくる場合もあります。
「てんきとくらす」というサイトは、日本全国の山の天気予報が一週間前か確認でき、山頂の気温も確認できるので便利ですよ。
靴下、登山靴については夏と同じもので問題ありません。
春秋の高山に登る場合
春・秋の高山となると厳しい天気になることもあります。
それから、同じ春でも4月上旬と5月末では「気象条件」、「登山道の状態」が全く変わってきます。
4月中は3,000m級の山ではまだ雪が積もっていますし、10月には雪が吹雪くこともあります。
これから登ろうとしている山が、積雪期なのか無積雪期なのかを確認して服装を考えましょう。
積雪期の場合は冬季の恰好が必要になってきます。
また、この季節の高山は気象が急激に変わることもありますので、過去の遭難事例等も調べてしっかり準備をし、万全の態勢で臨んでください。
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レインウェアー・便利なアイテム
最後にレインウェアとあると便利なアイテムを紹介します。
レインウェア
登山においてレインウェアは防護服と考えてください。雨や風から身を守るとても重要な道具です。
低山やハイキング程度の山でも、レインウェアは必ず用意しましょう。
登山専用のレインウェアは数万円と高いので、まずは1万円前後のものでもいいです。
また、レインウェアは上下で分かれているセパレートタイプものにしましょう。
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山で風雨にされされた場合、レインウェアやカッパないとどうなるか想像しにくいですよね。
例えるなら、冷水を全身に浴び続けて冬の季節にランニングをするようなものです。
少し大げさかもしれませんが、これぐらいに考えるとレインウェアがないとどうなるか分かりますよね。怖くなりませんか?
山の場合、夏でも雨・風の影響で低体温症になり、命を落とすこともありえますので十分に注意してください。
森林限界を超える高山や縦走をする場合は、しっかりとしたレインウェアを買っておきましょう。
森林限界を超える登山で雨風にやられると逃げ場がないです。防水性はもちろん、できれば透湿性があるものがいいでしょう。
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登山用レインウェア(雨具)の選び方
あると便利なアイテム
ゲイター(左)と速乾性タオル
登山中は汗を良くかきますのでタオルがあるといいです。
速乾性タオルはすぐに乾くのでおすすめです。
グローブは転んだ時に手を保護したり、岩場などを登る時に手が傷付くことを防いでくれます。
また、春・秋の気温が下がる季節や、風雨の状況では防寒グッズとして活躍します。
僕が良く使っているのは、ブラックダイヤモンドのグローブ。
登山道具では有名なメーカーで、手袋にも定評があります。
ブラックダイヤモンド(Black Diamond) ヘビーウェイト
ゲイターは水や石ころが靴の中に入るのを防ぎます。
川がある山道や水がたまった道では、靴の中への水の侵入を防ぐゲイターを準備するといいでしょう。
また、雨の翌日の山は登山道がドロドロになりますが、そんな時にも活躍します。
イスカ(ISUKA) ゴアテックス ライトスパッツ フロントジッパー
サングラスは日差しが強い山、高山などであると便利です。
もう一つ、雨に遭遇した時にサングラスがあると目を守ってくれてます。
強い雨だと目が開けてられないこともあったりします。
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