登山テント泊の本格入門 – 非日常の世界へ飛び込もう

山登りなんて全く興味がなかったのですが、たまたま誘われた登山で山の魅力にとりつかれました。
当時は仕事が超絶的に忙しく、趣味もなかったので週末はただ眠るだけの日々(笑)
それが登山にはまってからは、休みの日は早朝から山に。
そして、気がついたら単独でテント泊をするようになっていました。
 

これは雲海に浮かぶ北アルプスの槍ヶ岳と穂高連峰。
日本最後の秘境と呼ばれる雲ノ平を3日4日で縦走した最終日に見た絶景です。
テント泊とは、ありきたりな日常を抜け出し、普段の生活では経験できない「非日常」の世界に飛び込むこと。
これがテント泊の醍醐味です。
 
テント泊を始める前は、「自分一人でテント泊なんかできるのだろうか…」という不安がありました。
でも、えいやー!とやってみたら、意外と何とかなるものです。 
僕の場合、後ほど書くように失敗もやらかしましたが(笑)
テント泊をやりたいと思ったら、しっかり準備をして後は行動を起こすのみ!
 
さて、これからテント泊の本格入門として、次のことをお話ししていきます。

 

テント泊の費用とその対価


燕山荘のテント場から見た日の出は深く思いでに残っている
 
さて、いきなりお金のお話。
テント泊を始めるには10万円ぐらいお金が必要です(泣)
登山の装備を一通り持っている人でも、次のような道具を買わなければいけません。

  • 山岳テント
  • シュラフ(寝袋)
  • 登山マット(スリーピングマット)
  • テント泊用ザック

 
例えば、山岳テント(3万円)+ シュラフ(3万円)+ 登山マット(1万円)+ テント泊用ザック(3万円)+ …
とこれだけで10万円を超える出費となります。
それだけのお金をテント泊にかける意味があるのかどうか…
 
僕の答えはイエス。
だって、人生は一度きり。
テント泊にはお金では買えない価値があります。そこにあるのは、街中でいくらお金を積んでも味わえない「非日常」。

  • テントから顔を出したら夜空に輝く星空、流れ星
  • 雲海から昇ってくる赤々と燃える日の出
  • 疲れもふっとぶ、いつまでも歩いていたい縦走路
  • 疲れた中で食べる、高級ディナーを凌駕するカップラーメンと缶ビール
  • 寒い中でシュラフに潜り込み、今すぐ下界に帰りたいと思っちゃう辛さ(笑)

 
日帰り登山とは違って、テント泊は山の中で数日を過ごします。
テント泊って、不便ですよ。
 
テレビやコンビニもなく、お風呂にも入れないし、寝所を自分で作らなければいけません。
雨にやられることもあったり、荷物が重くて泣きたくなることもありますし、ひとたび山に入ったら途中で逃げることはできず、自分の力で下山しなければなりません。
 
不便で、辛くて、時には泣きたくなる。
でも、それがいいんですよ(笑) 最高の思い出になります。
体力的にも、時には精神的にも辛い中、登山道を黙々と歩いて下山した時のあの気持ち。
達成感とか安堵という言葉だけでは表現できない、何とも言えないその感動をぜひ味わってください。
◆関連記事
・登山テント泊の装備・グッズの総費用は10万円なり
 

テント泊の装備・服装


テント泊の装備は高級品が多く、一度買うと買い替えることも中々できないので、事前に知識をインプットしておきましょう。
そうすれば、失敗して買い直すこともなくなります。
 
山岳テント

山岳テントは一般的なキャンプ用テントとは違って、軽くて丈夫で一人で組み立てやすい構造になっています。
おすすめは自立型のテント。
ベンチレーターの有無、入口の場所などもチェックして購入しましょう。
家でも実際に組み立てて練習しておけば、テント場でスムーズにテントを組み立てられますよ。
◆関連記事
・山岳テントの選び方
・登山テント泊の家での練習方法を説明する
 
シュラフ(寝袋)

おそらく最初に購入するのは3シーズン用のシュラフになるでしょう。
素材はダウンと化繊のどちらかから選ぶことになります。
それぞれの長所短所がありますが、まずはダウンシュラフがおすすめです。
 
また、シュラフによって対応できる気温に違いがあるので、今後の自分の山行を想像して(春・秋の高山もやりたいのか?など)注意深く検討した方がいいです。
◆関連記事
シュラフ(寝袋)の選び方
 
登山マット

寝心地を左右するのはこのマットです!
マット選びを間違うと眠れなくなります。
 
ベッドに例えるなら「登山マット=マットレス」、「シュラフ=掛け布団」
シュラフ以上によく考えて選びましょう。
 
おすすめは、サーマレストのマットです。
僕も最初に買ったZライトソルは値段もそこまで高くなく、軽くて高機能でおすすめです。
◆関連記事
登山マットの選び方 
 
THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット Z Lite Sol Zライト ソル【日本正規品】


 
テント泊用ザック

重要なのはザックの容量・軽さではありません。
大切なのはフィット感。自分の体型にあった物を選びましょう。
そして、ヒップベルトが命です!
 
ザック自体は重くても構いません。逆に軽いザックはあまりおススメしません。
◆関連記事
・テント泊に使うザックの選び方

 
登山靴・靴下

ソールの柔らかい登山靴しか持っていないのなら、新しい登山靴の購入を検討しましょう。
荷物が重くなると足の裏への負担が増え、ソールが柔らかいと足の裏が本当に疲れます。
テント泊にはソールの堅い靴がいいです。
 
靴下は厚めでクッション性があるものをおすすめします。
僕のおススメは靴下専門メーカーのFITSのもの。
 
FITS(フィッツ) ミディアムハイカークルー


 
あと、靴下が汗で濡れるとマメや靴擦れになりやすいです。
靴下は必ず替えを持っていきましょう。
常に乾いたものを履き、テントで寝るときは乾かしましょう。
◆関連記事
・テント泊用の登山靴の選び方
・おススメする登山の靴下​
 
バーナー

テント泊では自分でご飯を作ることが楽しみの一つです。
重い荷物を背負ってテント場に着いた頃にはヘトヘト。そんな状況で食べるご飯は格別です!
登山飯に欠かせないのがバーナーですが、軽くて火力が強いものがおススメです。
◆関連記事
登山用バーナー(ストーブ)の選び方
 
PRIMUS(プリムス) P-153 ウルトラバーナー


 
テント泊の服装

夏でも高山の場合は10度台の前半まで気温が下がります。
自分の行く山の最低気温を確かめて、必要な服を準備しましょう。
 
ダウンか化繊のインサレーションウェアは持っていった方がいいです。
2、3千メートル級の高い山だと、気温が10度以下になるのですごく寒いです。
早朝に日の出を見たり、テント場の周りを散策する時に使います。
 
ミドルウェアはパタゴニアのフリースがおすすめです。
雪が降らない時期のテント泊なら、R1が温度調節がしやすくていいです。
あと、サンダルがあると便利です。
 
◆関連記事
・無積雪期・積雪期テント泊登山の服装
・僕の登山で使っているダウン・化繊アイテムを紹介する
・僕が登山で使っているパタゴニアのR1・R2フリースジャケットを比較レビュー
・僕が登山で使っているパタゴニア製品をまとめて紹介する

 
その他道具

ティッシュペーパー、スタッフバッグ、ランタンなどいくつかあると便利なアイテムがあります。
詳しくは、下記の記事をご覧ください。

◆関連記事
・2泊3日テント泊登山の装備・持ち物一覧を紹介 – 春・夏・秋季
・僕のテント泊登山の「持ち物チェックリスト」必需品・便利グッズ

 
いくつか準備した方がいいと思うアイテムを3つ紹介します。
まずは、速乾性タオル。汗を拭くためだけに使うわけではありません。
 
テント内で水・飲み物をこぼしちゃった場合、雨が降ってテントが濡れた場合に重宝します。
速乾性タオルであれば、濡れてもテント内で干したり、ザックに括りつけておけば乾きます。
 
Caloics® 速乾タオル スポーツタオル 2枚セット 収納袋付き


 
SOLのダクトテープは、補修用テープです。
ザック・テントが裂けたり、ハードシェルに穴が開いたり、靴ひもが切れても、これがあれば応急処置できます。
いざというときのために、一つ持っておくことをおススメします。
 
SOL(ソル) ダクトテープ 12080


 
同じくSOLのエマージェンシーブランケットも、いざという時の物。
万が一、遭難した場合、ピバーグが必要になった時のために用意しておきましょう。
登山は何が起こるか分かりませんから。
 
SOL(ソル) ヒートシート エマージェンシーブランケット


 

テント泊のパッキング


テント泊登山では、日帰り登山と比べると荷物の量が多くなります。
山岳テント、テントマット、シュラフはもちろん、食糧に水、予備の衣類など日帰り登山の倍近くなります。
 
荷物は衣類用、食料用、小物用などスタッフバッグやポーチにそれぞれ分けましょう。
そうすることで、テント内で荷物も散らばることはなくテント内を広く使えます。
また、目的のものを素早く取り出せます。
 
オクトス・スタッフバッグ3L/6L/10L 3枚セット (バリエーション5)


 
テント場からスムーズに出発できるように、事前にパッキングの知識を身に着けておきましょう。
◆関連記事
・登山のパッキングのコツと工夫 – 基本から応用まで説明する
 

食糧について


テント泊登山は体力の消耗が激しく、山ごはんが一段と美味しく感じます。
そして、ビールは最高です(笑)
 
日帰り登山とは違ったごはんを試してみるのもいいかもしれませんが、あまり見慣れないものはやめておきましょう。
消費カロリー、ルートを頭に入れて、ご飯・行動食・飲み物を準備しましょう。
 
◆関連記事
・テント泊登山の食糧計画の立て方(消費カロリー・軽量化)
・僕がおすすめする山ごはん・行動食について(フリーズドライ・レトルト・缶詰で究める山飯)

・登山で使う料理道具のベストな選び方

 

テント泊の時期について


夏の黒部五郎小舎のテント場から見た百名山の笠ヶ岳(右奥)
 
初めてのテント泊は夏がおすすめです。
日照時間が長く、行動できる時間が長くなるからです。
 
それから、余裕を持った時間設定にした方がいいです。
標準コースタイムの1.5倍~2倍ぐらいを見ましょう。
僕は最初、重い荷物を背負って歩くコツがわからず、全然進みませんでした。亀並みの遅さだったはず(笑)
 
春や秋に初めてテント泊する場合は、しっかり天候を調べておきましょう。
5月中旬~9月下旬までなら高山でも雪が降る可能性も少ないでしょう。
 
ただし、場所によっては雪が降り、寒波が来ることがあります。
後ほど僕の初めてのテント泊のエピソードを紹介しますが、秋の南アルプスに行ったら雪が降りました。
雪山の経験も、もちろん装備も持っていないので生きた心地がしませんでした…
 

テント泊と単独行


テント泊は、日帰り登山の経験にプラスアルファの知識・技術が必要となります。
もし、周りにテント泊の経験者がいるのなら、初めてのテント泊は一緒に連れて行ってもらうと安心です。
ルートはもちろん、道具についても心強いアドバイザーになってくれるでしょう。
 
「周りにそういう人がいない!」、という方も安心してください。
僕はいきなり単独のテント泊でした。
 
色々と失敗しましたが、それもいい思い出です。
ただし、あなたが単独で行こうと思っている場合は、いつも以上にしっかりと山の情報収集を心がけ、事前準備を怠らないようにしましょう。
 
◆関連記事
・単独行(ソロ登山)の魅力と遭難の危険について
・テント泊でやってしまった失敗談を紹介する
 

行く山を決める


テント泊をしたいと思ったら、まずは行きたい山を決めましょう!
ここが一番ワクワクするところです。
色々な本やネットの情報、登山仲間から情報を集めましょう。
山選びのおすすめの方法は、例えば北アルプス、八ヶ岳など行きたい山域を決めて登山本を一つ買うことです。
 
僕のおススメは、ヤマケイアルペンガイド。
コースの詳細情報(参考コースタイム、標高差、累積標高差、地図)に加えて、必要な技術度・体力度が示されています。
写真や絵が多く記載されていて楽しんで読めるルート本。
何泊必要かも書かれいるので、山に入れる日数から行く山・ルートを決めることもできますよ。
この本については、「テント泊初心者におすすめの本!ヤマケイアルペンガイド」の記事をご覧ください。
 

初めてのテント場・ルートの決め方


僕が初めてのテント泊で失敗したことの一つに、テント場・ルート選びがあります。
僕はいきなり日本で2番目に高い山、北岳に登ったのですが、当初の計画とは違った山行になってしまいました。
秋の北岳で雪に見舞われ、体力も足りずにルートを変更… 今となってはいい思い出です(笑)
 
テント泊が初めての方は、まずは「ベース型のテント泊」をおすすめします。
ベース型のテント泊とは、テントを山のふもとに張って山頂へは身を軽くして登る方法です。
 
もう一つの方法として「縦走型のテント泊」があります。
体力に自信がある方はこちらでもいいですが、縦走型テント泊は山頂・尾根までテントを担ぎ上げるため、体力(と経験)が必要になります。

(左)ベース型テント場の涸沢ヒュッテ (右)縦走型テント場の燕山荘
 
初めてのテント泊登山で問題になることの一つに「荷物の重さ」があります。
なかなかその辛さが想像しづらいと思いますが、実際にテント泊してみると否が応でも分かります(笑)
 
練習にと、家でザックにテント泊用の荷物を詰めて背負ってみると、
「重いけど、大丈夫そうだな」とか、「思っていたよりも軽いじゃん!」と思っちゃいます。
いざ背負って山を登り始めると徐々にその重さ感じ始め、そして息が切れてきます。
苦しみの始まりです(笑)
 
しばらくすると休憩が多くなり、やがて足が動かくなります。
景色を楽しむ余裕なんてありません。これは僕の経験談です(笑)
 

 
テント泊のように重い荷物を背負って歩くのは体力も必要なのですが、それ以上にコツ(経験)が必要です。
日帰り登山も回数を重ねると歩くコツがつかめてきますよね。あれと同じです。
 
テント泊登山の歩き方のコツ
これは言葉では伝えづらいのですが、何回か経験するとそのコツが分かってきます。
 
◆関連記事
僕のテント泊の雨対策を書いていく
 

最初におすすめのテント場


赤岳鉱泉のルートは人も多くテント泊初心者も安心。それでいて3千メートル近い八ヶ岳連峰の本格登山も楽しめます。
 
初心者におすすめのベース型登山のできるテント場は、八ヶ岳の赤岳鉱泉や行者小屋です。
ベース型と言っても、登山口から小屋まで800メートルの標高差があります。
テント場からは赤岳や硫黄岳が見え、朝早く出発すれば山頂から日の出を見ることができます。
 
2泊以上をしたい場合は、北アルプスの有名どころでは上高地~横尾~涸沢ヒュッテのルート
涸沢からは北穂高や奥穂高が登れ、テント場から見る穂高の山並みは圧巻です。
 
これらのテント場は、人が多くテント場も広さがあるので安心です。
赤岳鉱泉や涸沢ヒュッテは山小屋の売店が充実しているので、そこで食糧を調達することも可能。
体力に自信がない限り、まずはこのようなテント泊を経験して、次に縦走テント泊にステップアップするのが個人的にはいいと思います。
 
上記で紹介した以外におすすめのテント場をいくつか紹介します。

縦走型のテント場も含めて色々と見たい方は、「僕のおすすめの登山のテント場を紹介する」の記事をご覧ください。
◆関連記事
・テント泊初心者におすすめ!八ヶ岳の「赤岳鉱泉」はまさに山中のオアシス
 

予備日・エスケープルート・撤退


行く山が決まったら、予備日を含めた詳細スケジュールを組んでいきましょう。
また、悪天候・体調不良を想定したエスケープルートを設定することも必要です。
 
そして、辛い決断にはなりますが撤退についても頭に入れておきましょう。
撤退を想定して計画を立てないと無理をしてしまい、それが原因で遭難に繋がるおそれがあります。
 
◆関連記事
テント泊登山の計画の立て方・心構え(予備日・エスケープルート・撤退)
 

テント場のルール・マナー&着いたらすること


テント泊において、テント場は最も時間を過ごす場所です。
実際にテント場に着いたら、小屋で手続きをしたり、テントを設営したり、ご飯を食べたりと色々することがあります。
 
「トイレはどうする?」、「何時に寝て、何時に起きればいいの?」
と、最初は分からないことだらけです。
テント場について最低限のルールを知っておきましょう。
 
◆関連記事
・テント場について知っておくべき10のルール・マナー
・テント場に着いたらやるべき7つのこと
・僕のテント場での時間の過ごし方・暇のつぶし方
 

登山口へのアクセス・下山後の交通手段


登山口まで自分の車で行くか、バスや飛行機で行くか決めましょう。
車で行く場合は駐車場の場所、混雑状況を調べておくと安心です。
 
バスを利用する場合、季節によって運行時間が変わる場合があります。
また、奥地に行く場合は道が崩れてバスが運行していない場合もあるので、事前にチェックしましょう。
僕は毎日あるぺん号という登山バスをよく利用します。
関東限定ですが、夜中に出発して早朝に登山口に着くので便利です。
 
帰りの交通手段も考えておきましょう。
連休やお盆の時期は、高速道路がとても混むのでバスや車はとても時間がかかります。
新幹線や電車であればそのようなことはありません。
 
テント泊登山を行うためには、準備すること・知っておくことがたくさんあります。
その過程が楽しんですよね。
ああでもない、こうでもないと工夫しがいがあります。
是非、テント泊登山に挑戦してより深い登山の楽しみを味わってください!
 
この記事は「初めてのテント泊」の1パートです。

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