テント泊の主要アイテムの一つにシュラフ(登山用の寝袋)があります。
この記事ではシュラフの選び方について、僕が使っているモンベルとイスカのシュラフを交えて書いていきます。
シュラフはドイツ語で『眠り』と言う意味だとか。
納得できるシュラフを選んで、快適な「眠り」を手に入れれましょう。
登山のテント泊は、平地でのキャンプに比べて気象条件が過酷になります。
また、シュラフをザックに入れて自力で運ぶため、その大きさと重量が重要です。
シュラフを選ぶ際は、下記のポイントを見ましょう。
(1)対応温度
これから行う予定のテント泊では最低気温は何度ぐらいになるのか?
テント泊をしたいのは夏だけか?春も秋もやるのか?
予想される気温に対応したシュラフを選びましょう。
(2)素材の種類
ダウン、化繊、ダウンと化繊のミックス。
それぞれの素材には長所と短所があります。
これについは後ほど詳しく説明します。
(3)重さと大きさ
テント泊ではザックの重さはとても重要です。
ただし、シュラフは軽ければいいということではありません。
機能性、利便性、価格などを見比べて適切なものを選びましょう。
ほとんどのシュラフに『快適使用温度(コンフォート)』や、『使用可能限界温度(リミット)』など複数の対応温度が示されています。
シュラフには直接書かれていないこともあるので、お店の人に聞くか、買おうと思っているシュラフのメーカーのページで対応温度を調べてみましょう。
なぜ、このように複数の対応温度が書かれているのでしょうか?
それは、寒さは人によって感じ方が違うからです。
その人の体脂肪率によっても寒さの感じ方が違いますし、一般的に女性の方が男性よりも代謝が低く寒さに弱い傾向があります
初めてシュラフを選ぶ時は、自分のやりたいテント泊を考えて『快適使用温度』を参考とするのがいいです。
自分の行きたい山の最低温度がどれぐらいになるか、調べておきましょう。
9月下旬、秋の立山雷鳥沢キャンプ場の標高は2,330メートル。最低気温は零下を下回った。
気温を推測する方法として、『高度が100m上がると、0.6度気温が下がる』ということを覚えておくと便利です。
例えば、2000mの地点にテント場があるとすれば、その海抜0m地点よりも12度低いことになります。
「対応温度が低いものであれば年中使えるじゃん!」
と、思う人がいるかもしれません。
確かにそうなのですがその分、価格が上がります。
また、オーバースペックだと暑すぎたり、重かったりとデメリットがあります。
次の表はダウンと化繊(化学繊維)のシュラフの長所を並べたものです。
素材 | 長所 |
ダウン | 軽い 小さくなる 寒冷、乾燥したコンディションに秀でている 耐久性がある |
化繊 | 速く乾く 濡れても温かい 非アレルギー |
知っておきたいのが、シュラフが暖かさを保つ仕組みです。
それは、人の体から発される熱をシュラフの「空気の層」に閉じ込めることに依るものです。
ダウンと化学繊維(化繊)では、空気の層を作る際の特徴が違います。
ダウン素材のシュラフ
ダウンは化繊と比べると軽く、小さくなって耐久性があります。
値段は高い傾向にありますが、化繊より優れている部分が多いです。
シュラフはロフト(嵩)によってその温かさが決まります。
「ロフト=空気の層の厚さ」と思ってもらえればいいです。
ダウンは化繊と比べるとロフトを長い期間に渡って保つことができます。
そのため、ダウンは質を落とさず、製品をより長く使うことができます。
ロフトは「フィルパワー」という値で示されます。
例えば、2つの「同じ重さ」のシュラフがあったとします。
一方はフィルパワーが800、もう一方は650とします。
その場合、フィルパワーが800の方がロフトがあり(空気の層が厚く)、フィルパワー650と比べて温かいことを意味します。
一般的に冬季のシュラフはフィルパワーが高いものが多いです。
モンベルのスーパースパイラル ダウンハガーの素材表記。中綿はダウン90%、フェザー10%。ダウンもフェザーもどちらも羽毛。
ダウンのデメリットは何でしょうか?
それは化繊と比べて値段が高いことと、水に濡れると暖かを失うという性質です。
テント内では良く結露するため、シュラフが濡れないように注意を払ったり、防水性のあるシュラフカバーの購入を検討しましょう。
化繊素材のシュラフ
化繊の機能面で優れている点は、水に濡れても温かいというところです。
テント内が結露してもシュラフが濡れても、化繊はある程度の暖かを保ちますが、ダウンは温かさを失います。
また、化繊シュラフのメリットはその価格です。
化繊はダウンよりも安い傾向にあります。
デメリットはダウンに比べてサイズが大きく、その分重くなります。
同じ温かさのダウンシュラフと化繊シュラフを比べると、見た目にもすぐに分かるぐらい大きさが違います。
予算に問題なければ、ダウンシュラフをおススメします。
シュラフの重量を考える時は、次の点を抑えましょう。
上記を頭に入れて、予算と自分の行きたい山を鑑みて最適なものを選びましょう。
ほとんどのシュラフは「3シーズン用」と「冬季用」と分かれているのでその点を参考にしましょう。
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秋の上高地テント泊に使用したモンベルの3シーズ用シュラフ
僕は3シーズン用シュラフにモンベルの『スーパースパイラル ダウンハガー 800 #3』を使っています。
5年以上使っていますが、まだまだ使えそうです。
このシュラフはフィルパワーが800、重さは600gと非常に軽く小さくコンパクト。
実際のテント泊では、夏季の燕岳、常念岳、秋の北岳、八ヶ岳、涸沢などで使いました。
ダウンジャケット・ダウンパンツを履けば、-5度ぐらいまではこのシュラフで大丈夫です。
モンベル(mont-bell) 寝袋ダウンハガー800#3[最低使用温度-2度] サンライズレッド R/ZIP SURD 1121291-SURD
冬季シュラフには、『イスカ(ISUKA) 寝袋 エア 810EX』を使っています。
フィルパワー800で、-25度まで対応できる厳冬期対応のモデルです。
ダウンの量も多く、やや重いですが、その分とても暖かいです。
また、大きさもモンベルの『スーパースパイラル ダウンハガー 800 #3』の1.5倍ぐらいあります。
また、零下10度を下回る冬季の八ヶ岳の北横岳テント泊、赤岳テント泊でも十分に耐えられました。
顔の部分に加えて首の部分にもドローコードがあり、温かい空気を逃さないように工夫されています。
雪の権現岳で使用したイスカの冬季用寝袋
シュラフはテント泊の道具の中でも、最もザックの容量を占める道具の一つです。
そんな時に便利なのが、コンプレッションバッグ。
シュラフを圧縮してサイズをコンパクトにします。また、収納方法も簡単です。
僕は3シーズン用、冬季用シュラフのコンプレッションバッグを持っています。
必須アイテムではありませんが、僕は撮影道具などザックの容量が大きくなりがちなので重宝しています。
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もしシュラフが破れてしまったらどうなるか。
羽毛は飛び散り(考えただけで悲惨です)、もし寒い時期なら防寒に影響がでます。
僕は今までシュラフを破損した経験はないですが、そういうことに備えて必ずダクトテープを持っていきます。
実際にダウンジャケットが裂けた時はこれで直しました。
ダクトテープはシュラフの修理だけでなく、テントが破れたとか、ザックが破れたとか、靴ひもが切れたとか困ったときに色々と役立ちます。
粘着力がとても強く防水防風の性能を持っていますので、登山に行く時は1つ持っておくことをおススメします。
手入れについて
テント泊が終わったら、シュラフを袋から出して風通しのいいところで乾かしましょう。
シュラフは寝ている間に人体から出る水分を吸収し、テント内の結露した水分を含んでいることもあります。
そのままにしておくと、かびの原因になります。
シュラフを1日ぐらい壁にかけておけば十分に乾きます。
また、臭いが気になる場合は、ダウン専用洗剤を使って洗いましょう。
また、ファブリーズなどの消臭スプレーをかけて乾かすのもいいでしょう。
保管方法について
モンベルのシュラフ保管バッグ。ロフトが失われないように大き目に作れていて、布でできている。
シュラフは携帯用の袋に入れたままにするとロフトが失われてしまいます。
部屋のスペースに余裕があれば袋から出して、広げた状態で保管するのがいいです。
もしくは、布製の保管袋を使いましょう。
布袋は水分を中に閉じ込めず、シュラフを最適な状態に保ちます。
寒い山でテント泊をしようとしている人はそれなりのシュラフを選ぶ必要がありますが、それだけで防寒対策は十分ではありません。
この記事で書きましたが、「登山マット」が防寒対策にはとても重要になります。
シュラフは対応温度が示されているので、間違った買い物をすることは少ないでしょう。
一方、登山マットはRという特殊な値でその性能が示されているので、どのぐらいの温度まで対応できるのか分かりにくいです。
僕もそのために雲取山で眠れないテント泊を経験したことがあります。
シュラフだけでなく、登山マットもしっかり調べて山行に適したものを選びましょう。
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この記事は「初めてのテント泊」の1パートです。