僕が本格的に雪山テント泊を始めたのは、登山を始めてから3年ぐらい経ってからでしょうか。
登山を始めてからテント泊をやるようになり、次に雪山に登るようになりました。
そうすると、どうしても雪山テント泊に興味が出てきます(笑)
ただ、最初は不安・疑問だらけ。
「夜は寒さで凍え死ぬんじゃないのか」
「水はどうするの?凍ちゃうんじゃないの」
最初は本を読んだり、ネットで雪山テント泊のブログを見たりと情報収集に励みました。
雪山・冬山のテント泊を始めて色々と失敗もしましたが、今では毎年雪山でテント泊を楽しんでいます!
この記事では、「これから雪山テント泊を始めたい!」という方向けに計画の立て方、必要な道具などを書いていきます。
雪山テント泊の時期は大きく分けて二つあります。
一つは降雪が続く「厳冬期」です。
八ヶ岳で言うと、12月中旬~3月ぐらいまでの期間。
もう一つは、「残雪期」と呼ばれる時期4月~5月上旬までです。
この二つの時期に雪山テント泊ができるのですが、結構な違いがあります。
残雪期に比べると、厳冬期にテント泊をやっている人は少ないです。
大きな理由は寒さです。
夜になると零下10度以下になることも普通にあります。
狭いテントの中で寒さに耐えます。まるで修行状態(笑)
寒さで体が思うように動かず、テントを張るのも、ごはんを作るのも一苦労です。
まあ、その辛さがいいんですけど(笑)
12月末の赤岳へ登るため行者小屋での雪中テント泊。気温は零下15度を下回った
雪山テント泊を安全に始めるなら、残雪期がおすすめです。
僕も初めてのテント泊は残雪期の北アルプスの燕岳でした。
残雪期というのは主に3月下旬~5月上旬を指していて、高山ではまだ雪が残っています。
冬場に比べて天候が安定し、登山している人もたくさんいて安心できます。
気温も高いので、テントを張ってから散策なども楽しめるでしょう。
特にゴールデンウィークの時期は営業している山小屋も多く、雪山テント泊を始めるにはうってつけの時期です。
ゴールデンウィークに泊まった奥秩父の甲武信小屋は多くの人で賑わっていた
雪山テント泊は、無積雪期のテント泊よりもより慎重に計画を立てましょう。
ただでさえ重いテント泊のザックは、雪山で泊まるとなるとさらに重くなります(泣)
ザックにはアイゼン、ピッケルが加わり、時にはワカンやスコップが必要です。
シュラフも夏季のものに比べて重くなります。
歩き方で意識しておきたいのが、アイゼンとストックの使い方です。
アイゼンは早めの装着を心がけましょう。
ザックが重くてバランスが取りづらく、ちょっとよろめいたり、つまづいたりしたら滑る可能性が高まります。
ストックも積極的に使いましょう。
これもバランスを保ち、安定性を確保するためです。
また、重いザックを背負って歩く体・脚へのを負担を軽減してくれます。
僕は普段はストックは主に下山時に使いますが、雪山をやる場合は登りでもよく使っています。
ザックが重くて歩行のスピードが上がらないからと言って、無理にスピードを上げてはいけません。
汗をかきすぎると、体が冷えます。
特に指先、足先は凍傷のリスクもあるので気を付けたいです。
自分のペースで無理なく登るためにも、コースタイムは多めに見積もり、無理のない計画を立てましょう。
ここでは無積雪期のテント泊、冬山登山をやっているという前提で書いていきます。
そのような方が新たに購入する必要がある道具についてです。
厳冬期はイスカのシュラフ
まずは、シュラフについて。
厳冬期のテント泊を考える場合、気温が低いので冬季用のシュラフが必要です。
厳冬期のシュラフは零下20度の寒さにも耐えらるようにダウン・中綿の量が多いです。
僕が使っている冬季シュラフは、イスカ(ISUKA)のエア810EXです。
3シーズン用のモンベルのシュラフと比べてダウンの量が2倍で、重さも1キロを超えます。
その分、ものすごく温かい。
イスカ(ISUKA)のエア810EX。最低使用温度は零下25度。冬季シュラフとして定番のアイテム
凍えながらこの寝袋に入る時が至高の幸せ。
というか、厳冬期のテント泊は寒さで外に出るのも億劫になるので、ほぼこの中に蓑虫のごとく入っています(笑)
シュラフから顔だけ出して、テント内に白い息が広がるの見る時、
「極寒の地で孤独に寒さに耐えている、俺かっこえー」
と思うと同時に、
「何をこんなに辛いことをしているんだ、早くお家でヒーターにあたりたい、ラーメン食べたい」
という相反する複雑な気持ちが湧いてきます。
厳冬期のテント泊をやってみると、共感できるはずです(笑)
ゴールデンウィークなど厳冬期でない雪山であれば、3シーズン用のシュラフでいいかもしれません。
テントを張る場所の気温と、シュラフの最低使用温度を事前に見比べて調べておきましょう。
春の甲武信ヶ岳の雪山テント泊では、モンベルの3シーズン用シュラフで問題ありませんでした。
ただし、ダウンジャケットは厚めのものを持っていき、それを着てシュラフに入りました。
春の甲武信岳ではモンベルのスーパースパイラル ダウンハガーを使用
厳冬期用のシュラフはとても大きいです。
コンプレッションバッグあると、少しはコンパクトになるのでおすすめです。
SEA TO SUMMIT(シートゥサミット) ウルトラSIL eVENT コンプレッションドライサック L
◆関連記事
・登山用シュラフ(寝袋)のベストな選び方 – 僕が使っているモンベル・イスカのシュラフを交えて説明する
・冬季用シュラフで使っているコンプレッションバッグ イスカ(ISUKA) の圧縮収納袋をレビュー
シュラフはサーマレストのエアマット
次にお話しするのは、スリーピングマット。
これは、厳冬期であっても春の雪山であってもエアーマットをおすすめします。
シュラフの場合は、寒ければダウンジャケットやダウンパンツを着て何とかなるかもしれませんが、スリーピングマットはそれができません。
いくら厳冬期用のダウンを着たって、地面からの冷えには太刀打ちできません。
僕の弟はR値「3.5」のサーマレストのクローズド・セルパッドを春の燕岳で使用しましたが、寒くてほとんど眠れなかったと言っていました。
僕が使っているエアーマットは、サーマレストの「ネオエアー Xサーモ」です。
R値は「5.7」あり、サーマレストで最もR値が高いマットになっています。
春の雪山では、このマットを使って寒いと感じたことはありません。
ネオエアー Xサーモはサーマレストのマットの中で一番R値が高いエアマット
零下20度近くになる厳冬期にはこのエアーマットにプラスして、クローズドセルのマットを重ねて使っています。
寒さとは無縁ですね。ただ、ザックがかさばります…
THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット NeoAir XTherm ネオエアー Xサーモ ベイパー レギュラー(R)
◆関連記事
・厳冬期にも使える登山マットのサーマレスト「ネオエアー Xサーモ」をレビューする
・登山マットのベストな選び方 – 実際に僕が使っているサーマレストのマットを交えて説明する
テント・ザックは無積雪期のものでOK
テントはどうでしょうか?
これは無積雪用のもので問題ないです。
無積雪用テントのフライシートの代わりに被せる、スノースカートというものがあります。
これがあると温かいのは間違いないのですが、かさばるのと設置が少し手間がかかります。
ザックは積雪期も無積雪期も関係ありません。
荷物の量が増えるので、大きさが問題になるでしょう。
一度、道具をパッキングしてみて新たに購入する必要があるか考えましょう。
僕は65リットルを使っていますが、パンパンで余裕はありません(笑)
75リットルあると、安心して使えるのではないでしょうか。
まずは、ペグについて。
地面に刺してテントを安定させるあれです。
雪にペグ刺してもすぐに抜けるので、ペグを十字にして雪に埋め込む方法があります。
また、よくインターネットで目にするのは平べったい竹ペグです。
これもいいかもしれません。
僕は竹ペグを作るのが面倒なので、割りばしで十字にして雪に埋めてます(笑)
これでも十分に使えます。
雪が深くて風が強い場所だと、ビニール袋を使うこともあります。
ビニール袋に雪を入れて、細引きで留めたら雪の中に埋めます。
ちょっと面倒ですが、がっちりとテントが張れます。
雪を掘る小さいスコップがあると便利だと思います。
最悪、クッカーを使って雪を掘ることもできます(笑)
さて、スコップの話が出たところで、スコップについて。
これは、雪山テント泊する人が多い場所では「必要ないことが多い」です。
前いた人が整地してるんですよね。
なので、ブーツの底で整えるだけで済んじゃいます。
必要なのは人気(ひとけ)がない、テント場じゃないところにテントを張る時。
後ほど書きますが、厳冬期など山小屋が営業していない時期は、どこにテントを張ってもいいという暗黙のルールがあります。
そういうところにテントを張る場合は、スコップを使って自分で整地をしなければいけません。
電池の予備は必ず持って行きましょう。
雪山は電池の消耗が早いです。
写真撮影が趣味の人は、カメラの予備電池は多めがいいです。
スマホ・携帯の電池の消耗も早いため、使わない時は電源を切っておきましょう。
低温だと電池がどんどん減るので、ジャケットの中に入れるといいです。
ジャケットに入れると汗でビショビショになるので、防水でないスマホの場合は防水性の入れ物に入れましょう。
次は水筒について。
これは、サーモスの山専用ボトルがおススメです。
普通のサーモスの水筒よりも段違いに保温持続性があります!
長い時間が経っても湯気が出ます。最初使ったらびっくりするでしょう。
サーモスの山専用ボトル。500ミリリットル、900ミリリットルの2種類のサイズがある。
夜にお湯を作ってこれに入れておけば、朝の水作りも楽です。
行動中も温かい飲み物を摂取できるので、心強いです。
THERMOS(サーモス) 山専用ステンレスボトル900ml FFX-901
バーナーのガスは中身の量を確認しておきましょう。
雪山では水が沸騰しにくいので、ガスを結構使います。雪山の中でなくなったら最悪です。
あと、ライターはフリント式のものを。
電子式は最悪付かないです。
予備も持って行きましょう。
マッチがあると、いざというと時に役に立つかもしれません。
ビニール袋は多めに持って行きます。
あとで詳しく書きますが、基本的に雪山ではテントの中、寝袋の中に靴を入れます。
テント外には基本的に何も置かない方がいいです。
厳冬期だと全部凍ってしまいます。
小型ナイフも携帯しましょう。
これは、万が一に雪崩や木に積もった雪が落ちるなどして、テントが雪に埋まった時に使います。
ナイフを使ってテントを裂いて脱出します。
就寝時はナイフを衣服のポケットにに入れておきましょう。
小道具の最後に紹介するのは、ダクトテープ。
雪山では外は寒いし、水もなかなか沸かないので、テント内でごはんを作ります。
そして、何かの拍子にバーナーの火でエアーマットに穴を開けてしまったら大変です。
ダクトテープがあれば、補修が簡単に済みます。
雪山では寒くて細かい作業ができないので、この「簡単にできる」というのが重要です。
ダクトテープはシュラフやテント、何でも破損したら応急処置できます。
厳冬期の場合、厚手のダウンジャケットやダウンパンツを用意しましょう。
寒がりの人はダウンシューズもあると、夜の冷え対策になります。
ダウンなどのインサレーションウェアは、寒い夜を越えるためだけのものではありません。
テント設営・撤収時にはダウンウェアがないと、体が凍えて動かなくなります。
また、体が温まっていない歩き始めにダウンを着ることもあります。
パタゴニア公式サイト メンズ・フィッツロイ・ダウン・フーディ
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無積雪期・積雪期テント泊登山の服装 – 防寒着と寝間着の必要性について
前提知識として知っておきたいのは次のことです。
1については、山小屋のホームページを見れば営業しているかどうか分かります。
厳冬期には営業していない山小屋が多く、ゴールデンウィーク頃から多くの山小屋が開き始めます。
また、週末だけ営業している小屋もあったりします。
2については厳格なルールがあるわけではなく、暗黙的なものです。
人の多い雪山で、登山道近くにテントを張るのは止めた方がいいでしょう。
また、雪が積もっていても丹沢など元々テント泊を禁止している山域では、このルールは当てはまりません。
さて、テントを設営する安全な場所についてお話します。
無積雪期では増水や落石を考慮し、川の近くや崖下にテントは張りませんね。
無積雪期の条件にプラスして、雪崩が起きそうな場所、雪が積もった木の下にテントを張るのは止めましょう。
雪崩が起きそうな場所については、本を読むなどして勉強しましょう。
雪崩の種類や仕組み、雪崩が起きやすい地形やその見極め方が書かれています。
下記の本は写真だけでなく、絵が豊富でおすすめです。
雪崩の種類や仕組み、雪崩が起きやすい地形やその見極め方が書かれています。
雪崩リスク軽減の手引き―山岳ユーザーのための
雪が積もった木の下は、雪が落ちてきた時にテントがつぶされる可能性があるからです。
場所を見極めてテントを張りましょう。
テント設営は素早く行いましょう。
夏山と比べると気温が低いため、短時間で行わないと体が冷えて動きにくくなります。
体を冷やさないために、ダウンウェア、手袋を付けて作業しましょう。
手袋が汗で濡れている場合は、指が冷えて動かなくなるので新しいものに替えて作業をします。
荷物をテント内に入る時は、雪を入れないように注意しましょう。
できるだけ丁寧に、雪を払い落とします。
雪がテント内で解けると凍りつきます。
雪山テント泊ではすべてのものをテント内に入れましょう。
登山靴も例外ではありません。
ビニール袋に登山靴を入れて、寝袋の中に入れましょう。
登山靴は汗で中が濡れています。
凍ってしまうと、翌朝に足が入らなくなります。
他にも水など凍ってはいけないものは、寝袋の中に入れましょう。
厳冬期で山小屋が閉まっている場合は、水を作る必要があります。
テントの周りで綺麗な雪を大き目のビニール袋いっぱいに集めましょう。
あとはクッカーに少量の水を沸騰させて、雪を加えていきます。
翌日に必要な分まで作成しておきましょう。
厳冬期など外が寒い場合は、テント内でごはんを作ります。
しっかりと換気をしながら、クッカーで料理を作りましょう。
テント内でも氷点下になるので、鍋物などクッカーで煮込んで作れる食べ物がおすすめです。
厳冬期は寝袋の中が快適で、ごはんを作ることが少し面倒になります(笑)
それでもしっかりと、ごはんを食べましょう。
冬はカロリーの消費が激しいです。
お腹いっぱい食べないと、翌日の行動に支障が出ます。
先ほど、登山靴を寝袋に入れるお話をしました。
加えて、靴下、ベースレイヤー、手袋を寝袋に入れちゃいましょう。
これらも汗で湿っていると、気温が下がると体が冷える原因になります。
新しいものに交換しましょう。
靴下など寝袋に入れておくと、翌朝にはある程度乾きます。
テント内で細引きなどで吊るすと凍るので止めましょう。
冷え性の人は湯たんぽを持って行くのもいいです。
ナルゲンのウォーターボトルであれば、お湯も入れれるので湯たんぽとしても使えます。
寒さに不安のある人は、ホッカイロも役に立つでしょう。
テントの撤収も設営と同じく、素早く行いましょう。
寒い場合は防寒着を忘れずに。
厳冬期の場合に困るのが、テントが収納袋に入らないこと。
テントに付着した水分が凍ると、いつものように小さくまとまりません。
僕はいつも大き目のビニール袋を用意して、それに入れちゃいます。
冬季テント泊では、雪のためにテント、寝袋に多くの水分を含んでいます。
家についたら、すぐに乾かしましょう。
また、その他の道具も雨のテント泊のように、結構湿っていることがあります。
かびないように、ザックから取り出して乾かしておきましょう。
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今晩は!
動画は良く観させてもらってますが、ブログは始めて読みました。
大変参考になります。
私は山好きには羨ましがられますが、八ヶ岳南麓の甲斐大泉駅近くに東京から移住したものです。
今年から登山を始め、酷暑期を除き(笑)、週一登山を目指していますが、一番近い権現岳、赤岳にはまだまだ力不足で行ってません(常に単独なので、リスクを回避)。
車を使わないで歩いて行けるのに(笑
動画とブログを参考にしてもらいますので、これからもよろしくお願いします
こんにちは!動画もご覧いただいて(コメントまでいただいて)、ありがとうございます!
甲斐大泉駅近くに移住されたんですね!何とも羨ましい! 僕も将来、八ヶ岳近くに移住するのが夢なんです!
甲斐大泉駅は、権現岳に登った時に一度行きました!中央アルプスに登った時も乗り換えで利用した記憶があります。八ヶ岳だけでなく、南アルプスも良く見える所ですよねー。
移住されたと聞いただけでワクワクして、 憧れちゃいます(笑)
権現岳、赤岳が近いとは登山する人にとっては、楽園みたいな場所ですね!(笑)
単独で行かれるんですね!僕も単独が多く、天気がいい日をなるべく選ぶようにしています。
今月は天狗岳に登る予定です(天気が良ければ)!
動画も撮る予定です。コメントいただけると励みになります。ありがとうございます!
また楽しんでいただけるように動画作りに励みます!
アレ!コメ乗らないのか!