赤岩の頭手前から見た横岳(左)、赤岳(中央)、阿弥陀岳(右)
僕は最近、冬季・積雪期の八ヶ岳を年に1回は登っています。
まだまだ、冬に行きたい八ヶ岳の山はいっぱいありますねー、お金がなくなります(笑)
僕は神奈川に住んでいるのですが、八ヶ岳は関東圏からアクセスが良く、難易度もバリエーションがあって「雪山初心者」から「上級者」まで楽しめる山域です。
雪の八ヶ岳登山で日帰り、小屋泊、テント泊をいくつか経験したので、あくまで個人的なものになりますが、難易度別に山を紹介します。
冬季八ヶ岳へのアクセスは、長野県の茅野駅からアルピコ交通のバスを利用するのが便利。
どの登山口へも、茅野駅から1時間から1時間半ぐらいで到着することができます。
関東圏から公共交通機関を使って行く場合、中央線特急の「あずさ」や「かいじ」に乗って茅野駅へ行くことになるでしょう。
バスの時刻表、運賃はアルピコ交通のサイトで確認できます。
冬季はバスの運行時刻が変更になったり、運休となる路線があるので事前に上記サイトで確認することをおすすめします。
車で行く場合はスタッドレスタイヤが必要です。
麦草峠のように冬季は通行止めになる道がありますので、事前に交通情報を調べておきましょう。
北八ヶ岳の地図を拡大する>>
北八ヶ岳は雪山初心者に人気の北横岳・縞枯山あり、冬季も登山客が絶えない場所。
この二つの山は北八ヶ岳ロープウェイを利用することで、山頂まで1時間~1時間半ほどで行くことができるため、アイゼンを使った雪山歩行の練習には打って付けの場所です。
北八ヶ岳の南方には、北横岳を登った方が次に登るのに最適な天狗岳がそびえています。
健脚なら日帰り登山も可能性ですが、黒百合ヒュッテで泊れば余裕を持った登山ができます。
北横岳ロープウェイで一瞬にして本格的な雪山の世界へ
北横岳は、八ヶ岳の中でも雪山初心者に人気です。
北八ヶ岳ロープウェイを利用すれば、頂上まで1時間ちょっとで着きます。
危ない場所もないので、アイゼンを付けて歩くのが初めての方にもおすすめできる山です。
ストックだけで歩くことができますが、頂上直下は急登となっているため、そこでピッケルのちょっとした練習もできます。
道中にある北横岳ヒュッテ
真っ白な樹林帯歩きが楽しい
北横岳は「南峰」と「北峰」に分かれています。
南峰からは南八ヶ岳や日本アルプスの姿を見ることができ、北峰からは目の前に百名山の蓼科山が見ることができます。
南峰と北峰はすぐの距離なので、どちらも訪れて景色を楽しみましょう。
南峰からは南八ヶ岳が大きく見える
南峰から見た南アルプス(左)と中央アルプス(右)
北峰からは大きく蓼科山が見える
北峰からも南八ヶ岳が見える
2時間半~3時間あれば往復できます。
下山後は、北横岳ロープウェイ駅にあるレストランでお腹を満たして帰りましょう。
縞枯山も北横岳と並んで、雪山初心者におすすめの山になります。
こちらも北横岳への登山と同じく、北横岳ロープウェイを利用して坪庭がスタート地点となります。
北横岳と比べると、1時間ぐらい行程が長くなりますが難易度は同じぐらいです。
縞枯山の山頂から縞枯山展望台への眺めの良い尾根歩きが楽しいため、ちょっとした縦走気分を味わいたい場合はこちらをおすすめします。
縞枯山荘を通過して縞枯山へ向かう
山頂から展望台へ続く尾根からは、南八ヶ岳、日本アルプスが一望できる絶景が広がります。
また、山頂の直下の急登を除けば体力的にきついところはないです。
尾根から望む南八ヶ岳
尾根からは日本アルプスを一望できる
人も多いため晴れていればコース上にトレースが付く
縞枯山展望台からは、南八ヶ岳が眼前に迫って迫力満点!
南アルプス、中央アルプスもより近くに見ることができます。
展望台から見た南八ヶ岳
晴れていれば何の問題もないコースですが、吹雪で視界不良となった場合は注意が必要です。
縞枯山荘前は広く平坦な地形のため、ホワイトアウトした場合は方向感覚がなくなりそうです。
必ず地図とコンパスを持参し、悪天候時は山行を取りやめましょう。
北横岳、縞枯山を経験したら次に登るのは天狗岳がぴったりかもしれません。
日帰りで登る場合は8時間以上はかかるため、黒百合ヒュッテを利用すると余裕をもった登山ができます。
天狗岳へは「茅野→渋の湯」のバスに乗り、終点の渋の湯から登り始めることになります。
最初は樹林帯が続き、3時間ほどで黒百合ヒュッテに到着。
黒百合ヒュッテは小屋泊も、テント泊も可能です。
黒百合ヒュッテはごはんのメニューが豊富
小屋泊・テント泊する場合は早朝に起きて、20分ほど歩いた中山峠先の展望台に向かいましょう。
奥秩父の山越しに昇る日の出を見ることができるかもしれません。
また、日の出が見れた暁には赤く輝く天狗岳も見ることができます。
展望台から見た日の出
展望台から中山峠まで戻り南方に歩くと、森林限界を超えて風がかなり強くなります。
晴れていてもかなりの寒さを感じますので、十分な防寒対策が必要です。
黒百合ヒュッテから1時間半ほどで東天狗岳の山頂に着きます。
東天狗岳
東天狗岳からは360度の大展望で、目の前には南八ヶ岳が大きく見え、北アルプスも遠望できます。
ここも風が強いので、あまり体を冷やさないうちに、隣の西天狗岳へ向かいましょう。
距離にして20分ぐらいです。
東天狗岳山頂から見る南八ヶ岳。迫力のある爆裂火口の硫黄岳(左)が見える
東天狗岳から見る西天狗岳
西天狗岳から見た南八ヶ岳
西天狗岳山頂から見た北アルプス
黒百合ヒュッテから天狗岳へのコースは、「中山峠を右に折れるルート」と「天狗の奥庭を通過するルート」の2つがあります。
天狗の奥庭は岩稜帯となっていて、中山峠のコースよりも難易度はやや上に感じました。
この岩稜帯は悪天候時・降雪時はトレースが消え、方向の見失いやすくなると思います。
また風や雪を防ぐ樹林帯がないため、初心者の方は中山峠を通るルートをおすすめします。
北横岳から大岳へは、北峰の山頂から東北の方角へ樹林帯を抜けていきます。
登山客で賑わっていた北横岳から一転、静かな山歩きとなります。
トレースがないことも覚悟しましょう。
しばらく歩くと、視界が開けて樹林帯から岩稜地帯へと変わります。
岩稜帯は風が強くトレースも消えてやすいため、ルートファインディングの知識が必要になります。
また、岩と岩の間の穴に雪が被さっていることがあるため、穴に落ちないように注意して進みましょう。
雪の大岳
大岳へは岩稜帯を歩くことになる
しばらくすると、「大岳(往復)」、「双子池」と書かれた標識がある場所に出ます。
ここにザックを置いて、大岳を往復しましょう。時間にして15分ほどで大岳山頂に着きます。
山頂からは遠くに南八ヶ岳、目の前には先ほどまでいた北横岳、隣には蓼科山が見えます。
東の方角には遠くに浅間山を見ることができます。
山頂は風がものすごく強いため、雪はあまり積もっていません。
突風などで吹き飛ばされないように注意しましょう。
大岳山頂から見る南八ヶ岳
大岳山頂から見る北横岳(左)と蓼科山(右)
大岳から双子池への急な岩場の下りとなり、かなりの悪路となります。
僕が今まで経験した中で一番の悪路でした(泣)
落ちたら怪我をするような巨石の上を歩かなければならないのですが、岩が凍っているためかなりの注意が必要です。
アイゼンで雪と岩のミックスを歩き慣れていないと、この場所は苦戦が強いられるでしょう。
また、どの岩なら安全に歩いていけそうかと言ったルートファインディングの力も必要です。
コースタイムは無積雪期の2倍は取り、単独ではなく二人以上で行動するのがいいでしょう。
双子池へは雪と岩がミックスした急峻な悪路が続く
双子池ヒュッテは冬季は休業中のため、適当な場所にテントを張りましょう。
朝は太陽に輝く、凍った双子池が見れるかもしれません。
帰りは亀甲池を経由して北横岳に向かいます。
こちらは岩道はないので、歩きやすい道となります。
序盤は樹林帯が続きますが、トレースがない場合は地図とコンパスを使ってルートを判断しましょう。
また、木にテーブが巻かれている場合は、それもルートの参考にしましょう。
朝日に輝く凍った双子池
北横岳の山頂直下は難しい道ではありませんが、滑落すると命にかかわりますので、最後まで集中して登りましょう。
山頂に着いたら、あとは元来た道を戻り、北横岳ロープウェイを使って下りましょう。
このルートは危険度が高いため、単独で双子池ヒュッテ(冬季休業)でテント泊する場合は、亀甲池経由の往復をおすすめします。
南八ヶ岳の地図を拡大する>>
南八ヶ岳の中でも、赤岳と硫黄岳は積雪期も人気の高い山です。
どちらも茅野駅からバスで美濃戸口まで行き、そこが登山のスタート地点となります。
美濃戸口から3時間ほどの場所にある赤岳鉱泉は年中営業をしているため、冬も小屋泊・テント泊の登山客で賑わいます。
一方、南の権現岳は赤岳などと比べると、静かな山歩きが楽しめます。
北横岳や縞枯山を登った次は天狗岳に登るのもいいのですが、南八ヶ岳を登るなら硫黄岳がおすすめです。
硫黄岳であれば12本爪アイゼン、ピッケルを使った本格的な雪山登山を行えます。
危険な箇所も少ないので、晴れの日を見計らって挑戦してみましょう。
硫黄岳に登る場合は、赤岳鉱泉に一泊すれば体力的な余裕ができます。
赤岳鉱泉へは美濃戸口から北沢のルートを歩いていきます。
北沢のルート。難しい場所はない
人気のルートなので、降雪直後の一番乗りでない限りトレースも付いているはずです。
3時間ほどで赤岳鉱泉に到着します。
赤岳鉱泉では昼食を取ることもできます。
小屋泊の場合は、名物のステーキをいただけることが多いようです。
冬季は小屋の前でアイスキャンディーと呼ばれるアイスクライミングの練習場が作られます。
冬も賑わう赤岳鉱泉
赤岳鉱泉名物のステーキ
冬の赤岳鉱泉の名所となっているアイスキャンディーではアイスクライミングが体験できる
赤岳鉱泉から硫黄岳への道は、北の方角にある赤岩の頭に向かって歩いていきます。
しばらくは樹林帯歩きが続きます、沢のルートに入らないように気を付けましょう。
景色が開けてくると、赤岩の頭はもうすぐ。
後方に赤岳や阿弥陀岳が見えてきます。
赤岩の頭は急登を登っていきますので、しっかりとピッケル・アイゼンを効かせて一歩ずつ登っていきます。
中央が赤岳、右が阿弥陀岳
赤岩の頭への急登
急登を登り終えると、だだっ広い尾根に着きます。
振り返ると横岳、赤岳、阿弥陀岳がより一層美しく見えます。
北東の方角には硫黄岳が見えます。
この辺りはホワイトアウトすると方角が分かりづらくなるので、十分に注意しましょう。
ここから硫黄岳は20分ほどの距離。
途中、人1人分の幅の道をトラバースするので、滑落しないように集中しましょう。
山頂は広く、ここからの眺めも最高です。
東斜面は爆裂火口と呼ばれる切り立った斜面になっているので、淵に近付きすぎないようにしましょう。
写真人がいる場所が赤岩の頭へ登り切ったところ。奥に見えるのが硫黄岳
硫黄岳の頂上は広い。爆裂火口を見てから下山しよう
アイゼンとピッケルの使い方に慣れたら、八ヶ岳の主峰の赤岳が次の目標になるでしょう。
赤岳へは前述の赤岳鉱泉から、もしくはテント泊の場合はより赤岳に近い行者小屋(冬季休業)から登ることになります。
行者小屋から登る場合は、美濃戸山荘前の分岐から登っていくと若干近いです。
冬季の行者小屋
赤岳への登頂は文三郎尾根の往復ルートか、地蔵尾根から山頂を通って三郎尾根から下山するルートのどちらかがおすすめです。
地蔵尾根は急登なので、下山時に使用すると滑落の危険を感じるでしょう。
地蔵尾根は確実なアイゼン・ピッケルワークが必要になります。
滑落すると命に関わるほどの急斜面なので、集中を切らさずに登りましょう。
地蔵尾根の急登を振り返る
地蔵尾根を登った先が地蔵の頭です。
目の前にはこれから登る赤岳が大きく見えます。
ここからの尾根歩きは眺めが良く、西には北アルプス、東には奥秩父の山、そして富士山を見ることができます。
風が強くなるので、ハードシェル・ソフトシェルを着て体温が下がるのを防ぎましょう。
地蔵の頭から見る奥秩父の山
尾根からは富士山(右)を見ることができる
尾根から眺める赤岳
尾根歩きは特に難しい場所はありませんが、山頂直下は急登になっているので、気を抜かずに集中しましょう。
山頂からは絶景が広がります。
富士山に加えて南アルプスや権現岳など360度の大展望になります。
山頂直下の急騰
赤岳の山頂からも富士山が見える
滑落は下山時に多いので、文三郎尾根の下降ルートも集中しましょう。
鉄の階段や鎖にアイゼンを引っかけないように注意が必要です。
また、降雪直後は地蔵尾根、文三郎尾根ともに雪崩が起きる可能性があるので、雪の状態を見て撤退するかどうか判断しましょう。
文三郎尾根の鉄階段。アイゼンを引っかけないように注意
冬の赤岳は場所によっては、雪と岩のミックス地帯があります。
そのような場所では岩につまずいて滑らないように、一歩一歩足を置く場所を見定めて歩きましょう。
権現岳へは大きく分けて、編笠山を通るルートと三ッ頭を通るルートの2つがあります。
今回は僕が残雪期に登った三ッ頭を通るルートを紹介します。
このルートは天女山入口をスタートとします。
積雪期はこの先は車両通行止めとなっています。
このルートは往復で8時間ぐらいかかることが予想されるため、日帰りの場合は早朝にスタートし、健脚でなければテント泊にしましょう。
途中にテント場はないため、風が弱そうの場所に適当に張ることになります。
コースの標高差は1,200メートル近くあり、序盤以降は急登が続くためにかなりの体力が必要になります。
テントを担いで登った僕の足は、悲鳴を上げっぱなしでした(笑)
また、急登が続くだけなくアップダウンがあるために、カロリーはかなり消費します。
行動食、飲料は多めに持っていきましょう。
人気の赤岳と比べると人が少なく静かな雪山歩きができるのですが、降雪や強風でトレースが消える場合を考慮すると、自力で歩行できる力が必要になります。
地図、コンパスは必須です。
また、道が細く、雪庇ができる場所もあるので歩く場所には気を付けましょう。
三ッ頭
ルートからは赤岳が見える
雪庇に注意して歩こう
権現岳の山頂手前には、足1つ分のトラバースが必要な箇所があります。
ここは斜面が切れていて落ちることは許されないので、最大の集中力が必要です。
山頂は岩になっていて狭いです。
他に人がいる場合はお互いに譲り合いの気持ちを持って、邪魔にならないようにしたいですね。
権現岳の山頂
とにかく、歩行距離・標高差があるので余裕を持ったコースタイムにしましょう。
また、人が少ないため、道に迷わないように事前の情報収集を心がけましょう。
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