テント泊の中でも重要なグッズの一つに登山マット(スリーピングマット)があります。
僕はとある雲取山のテント泊でマットの選び方を間違ったため眠れないつらい経験をしたことがあります。
テント泊での寝心地を左右するのは、テントでもシュラフでもなくこの「マット」だと断言できます。
僕はシュラフばかりに目を向けていて、テント泊を始めた頃はこの事実に気づきませんでした。
これから正しいマットの選び方と、僕がおすすめするサーマレスト(THERMAREST)のマットについて書いていきます。
まず最初にマットに求められる役割・機能について考えてみます。
これらが主なマットに求められること。
寝心地については、ベッドに例えて考えると分かりやすいです。
ベッドの寝心地を左右するのは「マットレス」であって、「掛け布団」ではありません。
これがマットレスが寝心地を左右する理由です。
保温性についてはどうでしょうか?
これはマットの外見からは分かりづらいです。
なぜなら、「マットの厚さ = 保温性が高い」とは一概に言えないから。
スリーピングマットの保温性は「R値」という特殊な値で示されます。
これついては後ほど詳しく説明します。
ここでは、マットの保温性について深掘りしたいと思います。
マットはその上に、例えば予備の衣類などを重ねたとしても保温効果はほとんど上がりません。
なぜなら、地面からの冷気を遮断するためには、地面と体との間に「空気の層」が必要となるからです。
これはダウンウェアが暖かい理由と同じ。
衣類をマットの上に重ねても体重でつぶれてしまい、空気の層が作れないために保温性は期待するほど上がらない分けです。
保温性の高いマットは、うまく空気の層を作り出しています。
ここから少し話を変えて、マットの種類について説明したいと思います。
マットは大きく2つに分類できます。
どちらのタイプかはマットの材質を見ればすぐに分かります。
それぞれのマットの長所・短所は次の通りです。
エアーマット・パッド(空気を入れるタイプ)
サーマレストのエアーマット、ネオエアー Xサーモ
このタイプはクッション性、保温性を空気で作ります。
絶縁体や反射素材を使っていて温かさを保つように設計されているものもあります。
マットを膨らますために空気を入れる必要があり、収納袋を空気ポンプとしてを使えるもの、ハンドポンプを使うものがあります。
クローズド・セルパッド(独立気泡タイプ)
サーマレストのクローズド・セルパッド、Zライト ソル
このタイプは小さな空気セルが密集し、パッドを覆っています。
最もベーシックな登山マットで、ザックの外側に取りつけられているのはこのタイプです。
R値を知ろう
マット選びで知っておきたい言葉があります。
『R値』です。
R値が高くなるほど冷たい地面からの絶縁性能が高く、温かいことを意味します。下記に登山マットで有名なサーマレスト製のものを3つピックアップしましたので、それぞれのR値を見てみましょう。
エアーマット・パッド | クローズド・セルパッド | クローズド・セルパッド |
NeoAir XTherm ネオエアー Xサーモ | Z Lite Sol Zライト ソル | Ridge Rest Solar リッジレスト ソーラー |
R値:5.7 厚さ:6.3cm 重量:430g | R値:2.6 厚さ:2.0cm 重量:410g | R値:3.5 厚さ:2.0cm 重量:540g |
上記表の左のネオエアー Xサーモは、サーマレストの中でも最もR値が高いエアー式マットです。
他のクローズド・セルパッドと比べるてもR値が圧倒的に高いですよね。
つまり、温かさが他のマットよりも優れていることを意味しています。
次に表の真ん中、右の2つのクローズドセルマットを比べてみましょう。
厚さは同じ2.0cmですが、R値が違います。
ZライトソルはR値が2.6、リッジレストソーラーはR値3.5です。
マットが厚くなるほどR値が比例して上がる(保温性が上がる)、いうわけではないこと覚えておきましょう。
サーマレストのマットの中で最もR値の高いネオエアー Xサーモ。積雪期の甲武信岳テント泊で使用した
どのR値のマットを選ぶべきか
僕の経験では春~秋のテント泊で雪が積もっていなければ、R値が2.6のクローズド・タイプのマットで問題ありません。
先に紹介したサーマレストのマットで言うと、Zライトソルで大丈夫です。
残雪期の山・冬山だと、クローズドセルタイプのマットでは普通の人は寒さに耐えられないと思います。
エアーマットを選ぶか、もしくはクローズドセルパッドを重ねるなどして対応しましょう。
マイナス20度近くなる厳冬期はエアーマットがベストです。
僕のように寒がりの人は、エアーマットにクローズドセルパッドの組み合わせると安心。
具体的な例では、Zライトソルは9月の無積雪期の北岳(夜は0度ぐらいだった)では大丈夫でしたが、12月の雲取山(この時は氷点下10度ぐらい)では背中が寒くて一睡もできませんでした。
5月積雪期の燕岳では、ネオエアー Xサーモでは問題ありませんが、僕の知り合いはリッジレストソーラーで寒いと言っていました。
マットの長さや幅について
マットは長さや幅が数タイプ用意されていることがあります。
短いマットは、頭や脚の部分をザックや枕などで補います。
自分の身長やマットの携帯性を考えて、適切なマットを選びましょう。
マットの長さは保温性を考えると、最低でも肩からお尻までの長さが必要です。
THERMAREST(サーマレスト) のZライト ソル(右)とネオエアー Xサーモ(真ん中)。大きさの目安として一番左に555mlのペットボトルを置いた。サーマレストは様々な独自のテクノロジーをマットに取り入れている
僕がサーマレストのマットを選んだ理由は、他の人が書いたブログで評判が良かったという単純な理由。
初めてのテント泊ではZライトソルを選んで北岳に登ったのですが、店頭でこのマットを手に取ってみてその軽さに驚きました。
評判通りその性能は素晴らしく、このマットで数々のテント泊を行っています。
その後、冬のテント泊をするためにネオエアーXサーモを購入。
ネオエアーXサーモは寝心地も保温性も、携帯性も素晴らしいですマットです。
サーマレスト:Zライト ソル
銀色の面を上に、黄色の面を下にしてひきます。
春~秋のテント泊は、このマットを良く使います。
少しかさばるけれど、寝心地が良くて保温性も抜群です。
そして、そのサイズからは想像できなくらいとても軽い。
登山の軽量化はとても重要ですが、その点でZライトソルは優秀です。
マットの表面は無数の凹凸で覆われていて、この凹凸が保温性を高めている。
THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット Z Lite Sol Zライト ソル シルバー/レモン R (51×183×厚さ2cm) R値2.6 30670 【日本正規品】
サーマレスト:ネオエアー Xサーモ
膨らむとこのような形に。ふかふかで寝心地が良いです。もちろん、保温性は最高クラス。
積雪期・氷点下の山でも保温性を確保するマットで、サイズもとてもコンパクト。
空気を入れて膨らます必要があり、また、撤収時も空気を抜く作業があるので、クローズドセルタイプと比べるとひと手間かかります。
でも、この寝心地はたまりません。
このようにクルクルと巻いて、コンパクトになります。膨らます作業も慣れれば、3分程度でできるようになります。
THERMAREST(サーマレスト) 寝袋 マット NeoAir XTherm ネオエアー Xサーモ ベイパー レギュラー(R)
Zライト ソルのようなクローズド・セルパッドはサイズが大きいため、ザックの中に収納できず、外側に括り付けることになります。
付ける箇所に決まりがあるわけではないので、ザックの機能に応じて好きなところに付けて良いです。
ただし、細くて危ない登山道がある場合は、マットが引っかかって事故が起こることがないように取りつけるをよく考えましょう。
上記の写真以外にも、紐などを別途用意して、背面や天蓋にマットを付けることもできます。
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この記事は「初めてのテント泊」の1パートです。