この記事では僕の好きな探検家&ノンフィクション作家の角幡唯介(かくはたゆうすけ)さんについてその魅力を伝えたいと思います。
角幡さんの活動の中心は自分の探検の記録を本として出すことですが、一方、自伝的エッセイで探検家の日常をつづったり、別の探検家、登山家や作家との対談をまとめた本も出されています。
個人的には角幡さんはノンフィクション好きはもちろんですが、登山やハイキングが好きな人、アウトドアが好きな人に是非おすすめしたいです。
ワクワクする冒険ものの読み物は単純に面白いです。
シロクマに襲われたり、シロクマの肉を食べたり。北極を千キロ以上歩いたり…
これだけ聞いても面白そうじゃないですか。
あと、自伝的エッセイは腹抱えて笑えます。めちゃめちゃ面白いです。
<本の紹介>
ノンフィクション
エッセイ
書評本、対談本
僕は探検本も自伝エッセイもどちらも大好きですなのですが、彼の作品が好きな理由を考えてみると、次の三つがあるかのかなと思いました。
一つ目は文章力です。
構成力が素晴らしく、事実や歴史、そして角幡さんの考え・推測をまとめて文章を展開していきます。
いつも本を読んでいて「とても分かりやすいなー」と、思います。
すーと文章が体に入ってくるんですね。
本に没頭してあっという間に読み終えてしまいます。
二つ目はユーモアのセンスです。
彼の文章は自虐的なものを中心にユーモアに長けていて、特にエッセイ本は、電車の中で読んでいると笑いを堪えることに必死になることがあります(笑)
三つ目は探検場所の特殊性です。
例えば、エベレスト登頂とか北極点を目指すとか、そいういうメジャーな探検はやらないんですね。
チベットではツアンポー峡谷をさまよったり、ネパールでは雪男を探しに行ったり、北極探検も北極点に行くわけでなく、19世紀に北極探検中に絶滅したイギリス探検隊の軌跡を追うなど面白いことをやっています。
角幡さんは1976年北海道の芦別生まれです。早稲田大学時代は探検部に入っていました。
同探検部の高野秀行さんとは共著も出されています。また、探検部にかろうじて入らなかった石川直樹さんは早稲田大学の後輩で、角幡さんと対談をされています。
大学時代に登山を始め山の魅力を知ったようです。
本を読んでいると、今でも一年中いろいろな登山をされているようですね。
探検部当時はいつかの大探検に備えて登山をしていたようです。
大学時に探検部として1度目のツアンポー峡谷への偵察に出かけ、卒業後は土木のアルバイトをしたりニューギニアへ探検をしたりしていましたがその後朝日新聞社に入社します。
それでも探検への夢が捨てきれず新聞社を退社し、今度は単独でツアンポー峡谷へ向かったのでした。
新聞社という安定した身分から探検家に転身なんて、かなり思い切った決断ですよね。
その他、雪男探索としてネパールのタウラギリ山系のコーナンボン谷に行ったり、北極での三か月以上、距離にして1千キロを超える徒歩の探検をされたりしています。
現在も北極での壮大な探検を計画中のようです。
現在ではノンフィクションを中心、エッセイ、書評などの著書がありますが、色々な賞を受賞されています。
現在は結婚されて奥さんとお子さん一人がいるそうです。
「探検家の憂鬱」では親バカぶり(笑)も垣間見れます。
ここからは角幡さんの本をノンフィクション・エッセイ・書評と3つのカテゴリーに分類し、本の概要と個人的な感想を交えてその魅力を伝えていきたいと思います。
まずは、ノンフィクション本から紹介します!
角幡さんの出世作となった本作は、7千メートル級の山に囲まれたチベットのツアンポー峡谷の探検本です。
空白の五マイルと言うのは、そのツアンポー峡谷の中で人類が入ったことのない未知の空間のことで、角幡さんがそこを踏破しようとするというのが本の内容になります。
角幡さんは大学時代に空白の五マイルの存在を知り、一度ツアンポーに偵察に行っています。
その後、新聞記者になりますが辞めて、夢であったツアンポー峡谷に再び挑戦することとなります。
一か月弱に及ぶ探検中に千メートルの絶壁が立ちはだかったり、または死にかけたりと、その探検物語は読んでいてワクワクドキドキさせられます。
ツアンポーという馴染みのない場所も、キングドン・ウォードという英国のプラントハンターであり探検家が昔旅した足跡を丁寧に解説してくれているので、角幡さんがそこを冒険している価値や意味合いなども自然と分かっていきます。
角幡さんの本を初めて読む人には、おススメの本です。
僕がこの本を買った理由は、北極に興味があったからでもフランクリン隊に興味があったからでもなく、単行本の写真に魅かれたからでした。
そこには果てしない雪の台地を橇を引いて歩く姿や、オーロラや、今まで見たことない毛むくじゃらで顔が良く分からないジャコウウシの写真や、雪面に残るホッキョクグマの足跡だったりと、そのような写真が載っていて、「何これ!すごい!」的な感じで購入しました。
本の内容もとても面白くて、ここから角幡さんにはまっていくことになったのでした。
さて本の内容ですが、角幡さんと北極冒険家の荻田さんが北極で全滅したフランクリン隊の軌跡をたどる内容となっています。
フランクリン隊というのはイギリスの探検隊で、19世紀中ごろに北極を通ってヨーロッパとアジアを結ぶ北西航路の未開拓部分を目指そうとして遭難して隊の129人全員が死亡したと言われています。
この本の魅力の一つに本の構成があります。
角幡さんはフランクリン隊が通ったと思われる一千キロ超の道を歩くのですが、その土地土地でフランクリン隊の軌跡について資料や証言と、実際にそこを角幡さんが歩いて見たり感じたことを織り交ぜて本が書かれています。
僕は読んでいて、北極の景色が目の前に広がり、あたかも自分がフランクリン隊と同じ道を通っているような感覚になりました。
また、実際に角幡さんは北極を徒歩で走破していますから、その中で出会った動物や狩りについても書かれていて、「すごいな!」とテンションが上がります。
特にジャコウウシの狩りの部分は胸に響きましたね。
この本を読んだ人は「探検家、40際の事情」を読むことをおススメします。
この本では書かれていない、旅の裏側が書かれています。
角幡さんの本を初めて読む人にはおススメしない本ですね(笑)
面白い本なのですがとっつきにくいと思います。
この本は雪男捜索について書かれています。
ただし、角幡さんは雪男の存在については懐疑的な立場をとっています。
そこから、捜索隊に参加したり、雪男らしきものを見た登山家に話を聞くことによって(それにしても有名登山家がこんなにも雪男らしい動物を目撃してるとは)、少しですがその心境に変化が表れます。最後には単独で数千メートルの雪男の現れるのを待ちます。最後の結末はいかに…
捜索ポイントとなる物語の舞台はネパールは7千メートルを超えるダウラギリ山系のコーナボン谷という場所です。
その場所で雪男が度々目撃されているんですね。
雪男捜索に没頭し命を落とした方もいます。彼らをそこまで突き動かした雪男とは何なのか。
単なる雪男伝説に終わらない、雪男についての角幡さんの考察がこの本には書かれています。
角幡さん初の自分自身の探検ではないノンフィクション本になります。
舞台は宮古島の佐良浜地区のある漁師の男、本村実の漂流の話から始まります。
これは普通の漂流本(アグルーカの行方のような)とは違います。
佐良浜という栄光と衰退を味わった漁村の歴史と、その村の出身の本村実の物語です。
取材対象者は膨大で、沖縄から海外は本村実を救出したフィリピン人のもとまで角幡さんが足を運んでいます。
次にエッセイ本を紹介します。笑える内容が満載です。
探検の裏話なども書かれていることもあるので、角幡さんのノンフィクションを読んだ方には是非読んでほしいです。
探検家の憂鬱探(探検家、36歳の憂鬱 )に続く自伝的エッセイです。
この本めちゃ笑えます。
冒頭の章は、奥さんと家を買うことについて検討することについて、あれこれと書いているのだけどそういう日常記事も面白い。
次の「母牛の怨念」の章はアグルーカの行方を読んだ人であれば、「あの牛のことか」と分かり、「こんなことがあったのか」と驚いたのですが、この章も最後はかなり笑えましたね。
アグルーカの行方では書かれなかった出来事や最近の北極の旅で見たこと、感じたことも書かれていて面白かったです。
北極の肉旨いものランキングという内容があるのですが、その説明がとても食欲をそそる内容なんです。
本を読んでいるうちにシロクマとかアザラシの肉が無性に食べたくなったのは僕だけではないはずです(笑)
この本は「探検家の憂鬱」の書名を替え、エッセイ、あとがき、ブログの記事を追加したものです。
角幡さんが初めて出した自伝的エッセイです。
早稲田大学探検部への入部の経緯やその活動内容の章は面白かったです。
探検部で先輩の高野秀行の話も出てきます。ツナ缶のくだりは笑えました。
他に面白かったのは、「雪崩に遭うということ」の章。
角幡さんは3回も雪崩に飲まれているんですね。
文章を読むと今生きているのが不思議なぐらい、すごい体験をされています。
本の最後の方に「極地探検家の下半身事情」なる興味深い内容もあります(笑)
お子さんに関する記事もあるのですが、その親バカぶりには笑わされました。
最後に書評本、対談本を紹介して終わりにしたいと思います。
これらの本を読むと、「こんなに面白そうな本がたくさんあるんだな」と思いましたね。素敵な本と出合えますよ。
この本は、「旅を描く、自分を書く」、「人はなぜ冒険するのか」、「旅から見えること」という3つの部から成っています。
それぞれの部の中で、記事(雑誌などへの寄稿)、対談、他人の著書の解説という切り口で本が編集がされています。
例えば、「旅を描く、自分を書く」の部では、記事が2つ、対談が3つ解説が1つ収録されています。
個人的には第二部の「人はなぜ冒険をするのか」が興味深かったです。
角幡さんが「人はなぜ冒険をするのか、登山をするのか」ということを論理的展開で言葉にしています。
僕も登山が好きなので彼の考え方がとても興味深かったです。
他の作家との対談も面白かったですね。
角幡さんの人柄や考え方みたいなものがが垣間見れます。
とある作家を好きになるのって、本の内容や文体とかだけでなくその作家の人柄もあると思うんですよね。
僕はこの本を読んで角幡さんがより好きになりました。
『外道クライマー』の著者、セクシー登山部の舐め太郎こと宮城公博さんとの出合いが最高に笑えました。
ちょうど電車で読んでいて笑いを堪えるのに必死でしたね。
あと、この本は付録として角幡唯介活動年表なるものがついているので、角幡ファンは必見です。
この本は単なる書評ではありません。角幡さんが冒頭で書かれていますが、「読んだ本の内容についての論評や解釈を述べたものではなく、それぞれの本が角幡さんに与えた影響のようなもの」について書かれています。
この本は色々な楽しみ方があります。
上に書いたように本書は単なる書評ではなく、「角幡さんという探検家にとってどいう意味があったか」みたいなことが書かれています。
そのために、角幡さんの探検・経験談が割と詳細に書かれており、そこから本について解説されたりしています。
角幡さんという一探検家を知るには、いい本だと思いました。彼の考え方・生き方みたいなものが見えます。
もちろん、素敵な本の存在を知ることができます。
小説、ノンフィクション16冊が紹介されています。僕も改めてこの本を読み直してみて、「あの本を読み直してみたいな」と思いました。
個人的には、角幡さんの書評は登山好きの方が読むと、素敵な本に出会える確立が高いのではないかと思っています。
早稲田大学探検部の先輩となる高野秀行との共著となります。
僕はこの本を読んで、高野さんの存在を知り、「謎の独立国家ソマリランド」や「恋するソマリア」を読みました。
角幡さんとは探検内容、文章ともスタイルは全く違いますが角幡さんと同じくユーモアにあふれる方です。
本書の内容は、それぞれが探検家になるまで、早稲田大学探検部、作家についてなどの切り口で喋りまくる内容となっています。
お二人ともやっぱり変わってますね(笑)
僕がこの本がいいなと思ったのは、お二人がいっぱいおススメの本を紹介してくれるところです。
この本が面白い、あの本が面白いとその内容を教えてくれます。
やっぱりお二人とも探検家であると同時に、優れた作家なので色々と面白い本を知ってるんですね。僕もこの本をきっかけに素敵な本に出会えました。
この本も笑える内容があるのですが、あとがきの高野さんの角幡さんのことを語る部分は最高に笑えました。